大学数学の基本のキ、写像について定義と性質を解説します。
定義
写像とは何かを、言葉で説明すると次のようになります。
\(AとBを集合とする。\)
この時、\(A\)の元に\(B\)の元を対応させる対応付けのことを、\(A\)から\(B\)への写像と呼ぶ。
また\(A\)をこの写像の定義域、\(B\)を終域と呼ぶ。
どうでしょうか?かなりふわっとしていて、何でもありな感じがするかもしれません。が、当然そんなことはなく以下のような条件を満たすことが、暗黙に要請されています。
- \( Aのすべての元に対し対応付けがされている。\)
- \( Aの元に対し、対応するB\)の元はただ一つに決まっている。
対応付けがこれらの条件を満たし、ちゃんと写像になっていることを、well-definedと呼びます。
要するに直訳して”きちんと” “定義されている“ということです。
記号
基本的に写像には名前をつけます。これはどういうことかというと、$$ fをAからBへの写像とする $$ みたいな感じです。さらにこれを記号で表すときは、$$ f:A \to B $$とします。また、\( a \in A に対し b \in B \)が対応していることを明示したい場合は、 $$ f : a \mapsto b$$や$$ f : A \to B \: ; a \mapsto b$$などと表します。集合と元で微妙に矢印が違うことに注意してください。
例
写像の最たる例は関数です。
例1
\( f(x)=x^2 \)という二次関数を考えてみましょう。
これは要するに、”実数\(x\)に対し実数\(x^2\)を対応させる”ということなので、
写像の一種となっています。いかにも写像らしく表すとすると$$f:\mathbb{R} \to \mathbb{R}\: ; x \mapsto x^2$$となります。
つまり写像とは何のことはない、ただの関数のようなものという訳です。ではどう使い分けるのかというと、終域が\(\mathbb{R}や\mathbb{C}\)など、数からなる集合の時には関数と呼び、そうでない一般の場合には写像と呼ぶ……ということが多いです。
例2
もっといろんなものを写像としてとらえることができます。例えば、微分とか。
実数係数の多項式全体の集合を\(\mathbb{R}[x]\)とする。このとき”微分する”ことにより、写像$$ \frac{d}{dx}:\mathbb{R}[x]\to\mathbb{R}[x]\: ;f(x)\mapsto f'(x)$$が定まる。
これはつまり、\( \frac{d}{dx}(x^2)=2x, \frac{d}{dx}(4x+1)=4\)といった対応です。
例3
逆に写像になっていない対応付けについても見てみましょう。
- 実数\(x\)に実数\(\frac{1}{x}\)を対応させる。
これは\(x=0\)に対応する実数が定義されていないので、\(\mathbb{R}から\mathbb{R}\)への写像とはなっていません。しかし\(0\)を除いてやることで、写像$$\mathbb{R}\backslash \{0\}\to \mathbb{R};\: x\mapsto \frac{1}{x}$$はwell-definedとなります。 - 有理数\(\frac{p}{q}\: (p\in\mathbb{Z},q\in \mathbb{N})\)に対し、整数\( f\left(\frac{p}{q}\right):=p+q\)を対応させる。
これは具体的には、$$f\left(\frac{1}{2}\right)=1+2=3$$といった具合ですが、\(\frac{1}{2}=\frac{2}{4}\)なので$$f\left(\frac{2}{4}\right)=3$$でないといけません。しかし定義通り計算すると$$f\left(\frac{2}{4}\right)=2+4=6$$となってしまい、対応先がただ一つに定まっていないことが分かります。
これは例えば、有理数を既約分数の形にしてから計算するように定めてやることでwell-definedとなりますね。
まとめ
写像について、定義や例を解説しました。写像は集合とセットで、数学の基本言語と呼ぶべき非常に基本的な概念です。頭にしっかりと馴染ませて、数学の世界を旅しましょう!
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