写像の像、逆像について、定義や性質を紹介します。
定義
まずは定義をします。
\(f:A \to B\)を写像とし、\( U \subset A \), \( V \subset B \)とする。
この時、$$ f(U):= \{f(x)|x\in U \}$$を\( Uのf\)による像(image)と呼び、
$$ f^{-1} (V) :=\{x \in X|f(x) \in V\} $$を \( Vのf \)による逆像(inverse image)と呼ぶ。
特に\(X\)全体の像を\(f\)の像と呼び、$$\mathrm{Im}f:=f(X)$$と表す。
ここで注意しておきたいのが、逆像の\(f^{-1}\)は逆写像の意味ではないということです。一般にあらゆる写像に逆写像が存在するわけではないのに対し、逆像はいつでも考えることができます。このあたりは最初は混同しがちなので注意が必要です。
例
少し例を見てみましょう。
\( f:\mathbb{R} \to \mathbb{R}\: ; x \mapsto x^2 \)とすると、次のようになる。
$$ f((0,2))=(0,4), $$ $$ \mathrm{Im}f=f(\mathbb{R})=[0,\infty), $$ $$ f^{-1}((0,4))=(-2,0)\cup(0,2), $$ $$ f^{-1}(\{-1\})= \emptyset $$
性質
像、逆像と共通部分、和集合の間には次のような性質が成り立ちます。
\(f:A \to B\)、\( U_1, U_2 \subset A \), \( V_1, V_2 \subset B \)に対し、以下が成り立つ。
\begin{align} &( 1 ) &f(U_1 \cup U_2) &= f(U_1) \cup f(U_2) \\[5pt] &(2) &f(U_1 \cap U_2) &\subset f(U_1) \cap f(U_2) \\[5pt] &(3) &f^{-1}(V_1 \cup V_2) &= f^{-1}(V_1) \cup f^{-1}(V_2) \\[5pt] &(4) &f^{-1}(V_1 \cap V_2) &= f^{-1}(V_1) \cap f^{-1}(V_2) \\[5pt] &(5) &f^{-1}(f(U_1)) &\supset U_1 \\[5pt] &(6) &f(f^{-1}(V_1)) &\subset V_1 \\
\end{align}
さらにfが単射なとき、(2), (5)は等号となる。
(2)は一般には等号にならないことに注意しましょう。
証明
\( ( 1 ) f(U_1 \cup U_2) = f(U_1) \cup f(U_2) \)
\( y\in f(U_1 \cup U_2) \)とする。この時、ある\( x\in U_1 \cup U_2\)が存在し、\(y=f(x)\)となる。
\( x\in U_1 \cup U_2\)より、\(x\in U_1またはx\in U_2\)となる。前者の場合\(y=f(x)\in f(U_1),\)
\( 後者の場合y=f(x) \in f(U_2)\)となる。従って\(y\in f(U_1) \cup f(U_2)となる。 \)
\(逆にy\in f(U_1) \cup f(U_2)\)とする。\(y\in f(U_1)\)のとき、ある\(x\in U_1が存在しy=f(x)となり、\)
\( y\in f(U_2)\)のとき、ある\(x\in U_2\)が存在し\(y=f(x)となる。\)
\(以上をまとめると、あるx\in U_1\cup U_2\)が存在し\(y=f(x)となるということ。\)
\(すなわちy\in f(U_1) \cup f(U_2)となる。 \)
以上より、\( f(U_1 \cup U_2) = f(U_1) \cup f(U_2) \)
\( (2) f(U_1 \cap U_2) \subset f(U_1) \cap f(U_2) \)
\( y\in f(U_1 \cap U_2)\)とする。この時、ある\(x\in U_1 \cap U_2\)が存在し、\(y=f(x)となる。\)
\( x\in U_1よりf(U_1)\)で、\(x\in U_2よりf(U_2)となる。\)
\(よってy\in f(U_1) \cap f(U_2) となる。\)
以上より、\( f(U_1 \cap U_2) \subset f(U_1) \cap f(U_2) が成立する。\)
\( さらにf:単射とし、y\in f(U_1) \cap f(U_2) とする。\)
\( y\in f(U_1)\)よりある\(x_1\in U_1\)が存在し、\(f(x_1)=yとなり、\)
\( y\in f(U_2)\)よりある\(x_2\in U_2\)が存在し、\(f(x_2)=yとなる。\)
\( f \) :単射なので、\(f(x_1)=f(x_2)\)から\(x_1=x_2\)が従う。
\(したがってx_1=x_2\in U_1 \cap U_2\)となり、\(f(x_1)=f(x_2)=y\in f(U_1 \cap U_2)\)となる。
よって逆向きの包含も成立する。
\( (3) f^{-1}(V_1 \cup V_2) = f^{-1}(V_1) \cup f^{-1}(V_2) \)
\( x\in f^{-1}(V_1 \cup V_2)\)とする。この時、\(f(x)\in V_1 \cup V_2となる。\)
\( f(x)\in V_1\)の時は\(x\in f^{-1}(V_1)\)となり、\(f(x)\in V_2\)の時は\(x\in f^{-1}(V_2)である。 \)
\(したがって、x\in f^{-1}(V_1) \cup f^{-1}(V_2) である。\)
\(逆に、x\in f^{-1}(V_1) \cup f^{-1}(V_2) とする。\)
\( x\in f^{-1}(V_1)\)の時は\(f(x)\in V_1\)となり、\(x\in f^{-1}(V_2)\)の時は\(f(x)\in V_2となる。\)
\(よってf(x)\in V_1 \cup V_2\)となり、\(x\in f^{-1}(V_1 \cup V_2)が従う。\)
\(以上より、f^{-1}(V_1 \cup V_2) = f^{-1}(V_1) \cup f^{-1}(V_2) \)
\( (4) f^{-1}(V_1 \cap V_2) = f^{-1}(V_1) \cap f^{-1}(V_2) \)
\( x\in f^{-1}(V_1 \cap V_2)\)とする。この時、\(f(x)\in V_1 \cap V_2となる。\)
\( f(x)\in V_1よりx\in f^{-1}(V_1)\)で、\( f(x)\in V_2\)より\(x\in f^{-1}(V_2)である。\)
\(したがって、x\in f^{-1}(V_1) \cap f^{-1}(V_2) となる。\)
\(逆に、x\in f^{-1}(V_1) \cap f^{-1}(V_2)とする。\)
\( x\in f^{-1}(V_1)\)より\(f(x)\in V_1\)で、\(x\in f^{-1}(V_2)\)より\(f(x)\in V_2となる。\)
\(よってf(x)\in V_1 \cap V_2\)となり、\(x\in f^{-1}(V_1 \cap V_2)が従う。\)
\(以上より、f^{-1}(V_1 \cap V_2) = f^{-1}(V_1) \cap f^{-1}(V_2)\)
\( (5) f^{-1}(f(U_1)) \supset U_1 \)
\( x\in U_1とすると、f(x)\in f(U_1)\)となり、\(x\in f^{-1}(f(U_1))が従う。\)
\( よって f^{-1}(f(U_1)) \supset U_1 となる。\)
\(さらにf:単射とし、x\in f^{-1}(f(U_1))とする。\)
\(このときf(x)\in f(U_1)\)となる。よってある\(x’\in U_1\)が存在し、\(f(x’)=f(x)が成立する。\)
\(ここでf:単射よりx=x’となり、x\in U_1が従う。\)
\(よって逆向きの包含も成立する。\)
\( (6) f(f^{-1}(V_1)) \subset V_1 \)
\( y\in f(f^{-1}(V_1)) \)とする。このとき、ある\(x\in f^{-1}(V_1)\)が存在し、\(f(x)=yとなる。\)
\( x\in f^{-1}(V_1)\)より、\(y=f(x)\in V_1が従う。\)
\( よって f(f^{-1}(V_1)) \subset V_1 となる。\)
ちなみに筆者は(5)の包含の向きを、行って戻って大きくなっていることから、
“偉そうな出戻り”と覚えています。
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