本記事では純非分離拡大の定義と、同値な言い換えについて解説します。
定義
定義は以下の通りです。
を代数拡大とする。任意のが上分離的でないとき、は純非分離拡大であるという。
その名の通り、究極まで分離拡大から遠い拡大のことです。
少し注意が必要なのが、自明な拡大は純非分離拡大となるということです。なぜなら、上の定義の条件はということですが、自明な拡大についてはは空集合なので、前提が常に偽となってしまいます。なので条件は常に成立します(空虚な真)。
自明な拡大は分離拡大なので、「純非分離拡大だからといって非分離拡大とは限らない」という、ちょっとややこしいことになっています。もちろんなる非自明な拡大については
純非分離拡大ならば非分離拡大
は成立します。特に非自明な純非分離拡大は正標数の場合にしか起こり得ません。
性質
元の分離性や非分離性は得てして直接チェックしづらいので、定義の条件を何かしらの形で言い換えられたら嬉しいですね。ありがたいことに、次のような言い換えが成立します。
標数の代数拡大に対し以下は同値。
(証明)
のとき、(1)は常になりたつ。また(2)についても、があらゆる元に対し条件を満たすので常に成立する。よって以下とする。
とする。のときはと取ればよいので、以下とする。の上の最小多項式をとすると、ある整数と既約な分離多項式によってと表せる(こちらを参照のこと)。よりはの根である。従ってはの上の最小多項式となる。よっては上分離的であり、純非分離拡大の定義(の対偶)からが従う。
とする。(2)よりあるが存在し、となる。このとき多項式はを根にもつので、の上の最小多項式はを割り切る。いまが成立するので、と表せることが従う。だととなり矛盾するのでであり、はを重根として持つ。よっては上分離的でない。
(証明終)
(実は最後の証明においてが成立します)
コメント