純非分離拡大

本記事では純非分離拡大の定義と、同値な言い換えについて解説します。

定義

定義は以下の通りです。

\(L/K\)を代数拡大とする。任意の\(a\in L\backslash K\)が\(K\)上分離的でないとき、\(L/K\)は純非分離拡大であるという。

その名の通り、究極まで分離拡大から遠い拡大のことです。

少し注意が必要なのが、自明な拡大\(K/K\)は純非分離拡大となるということです。なぜなら、上の定義の条件は\[a\in L\backslash K\Rightarrow aはK上非分離的\cdots(*)\]ということですが、自明な拡大\(K/K\)については\(L\backslash K\)は空集合なので、前提\[a\in L\backslash K\]が常に偽となってしまいます。なので条件\((*)\)は常に成立します(空虚な真)。

自明な拡大は分離拡大なので、「純非分離拡大だからといって非分離拡大とは限らない」という、ちょっとややこしいことになっています。もちろん\(L\neq K\)なる非自明な拡大については

純非分離拡大ならば非分離拡大

は成立します。特に非自明な純非分離拡大は正標数の場合にしか起こり得ません。

性質

元の分離性や非分離性は得てして直接チェックしづらいので、定義の条件を何かしらの形で言い換えられたら嬉しいですね。ありがたいことに、次のような言い換えが成立します。

標数\(p>0\)の代数拡大\(L/K\)に対し以下は同値。\begin{align}&(1) \:L/Kは純非分離拡大\\[5pt]&(2)\: 任意のa\in Lに対しn\geq 0がありa^{p^n}\in Kとなる\end{align}

(証明)
\(L=K\)のとき、(1)は常になりたつ。また(2)についても、\(n=0\)があらゆる元に対し条件を満たすので常に成立する。よって以下\(L\neq K \)とする。

\((1)\Rightarrow(2)\)\(a\in L\)とする。\(a\in K\)のときは\(n=0\)と取ればよいので、以下\(a\in L\backslash K\)とする。\(a\)の\(K\)上の最小多項式を\(f(X)\in K[X]\)とすると、ある整数\(n\geq1\)と既約な分離多項式\(g(X)\in K[X]\)によって\[f(X)=g(X^{p^n})\]と表せる(こちらを参照のこと)。\[g(a^{p^n})=f(a)=0\]より\(a^{p^n}\)は\(g(X)\)の根である。従って\(g(X)\)は\(a^{p^n}\)の\(K\)上の最小多項式となる。よって\(a^{p^n}\in L\)は\(K\)上分離的であり、純非分離拡大の定義(の対偶)から\(a^{p^n}\in K\)が従う。

\((1)\Leftarrow(2)\)\(a\in L\backslash K\)とする。(2)よりある\(n\geq0\)が存在し、\(a^{p^n}\in K\)となる。このとき多項式\(X^{p^n}-a^{p^n}\in K[X]\)は\(a\)を根にもつので、\(a\)の\(K\)上の最小多項式\(f(X)\in K[X]\)は\(X^{p^n}-a^{p^n}\)を割り切る。いま\[X^{p^n}-a^{p^n}=(X-a)^{p^n}\]が成立するので、\[f(X)=(X-a)^m\quad(1\leq m\leq p^n)\]と表せることが従う。\(m=1\)だと\(a\in K\)となり矛盾するので\(m\geq 2\)であり、\(f(X)\)は\(a\)を重根として持つ。よって\(a\)は\(K\)上分離的でない。

(証明終)

(実は最後の証明において\(m=p^n\)が成立します)

コメント

タイトルとURLをコピーしました