形式微分

本記事では形式微分の定義と性質について解説します。多項式の分離性の判定にも使える概念なので、しっかり把握しておきましょう!

定義

定義は以下の通りです。

\(R\)を可換環、\(R[X]\)を\(R\)係数の多項式環とする。\[f(X)=\sum_ka_kX^k=a_nX^n+a_{n-1}X^{n-1}+\cdots+a_0\in R[X]\]に対し、\(R\)係数多項式\[\sum_kka_kX^{k-1}=na_nX^{n-1}+(n-1)a_{n-1}X^{n-2}+\cdots+2a_2X+a_1\]を\(f(X)\)の形式微分と呼び、\(f'(X)\)と表す。

皆さんがよく知る実数係数多項式の微分の性質\[(X^n)’=nX^{n-1}\]を逆にそのまま定義にしたということです。

実数係数多項式の微分には他にもさまざまな性質がありました。形式微分も”微分”を名乗るからにはそれ相応の性質が成り立ってほしいところです。ありがたいことに、なじみ深いいくつかの性質が成り立ちます。

性質

\(R\)を可換環、\(a,b\in R\)および\(f,g\in R[X]\)とすると、形式微分について以下が成立する。\begin{align}(af+bg)’&=af’+bg’\quad&&(線型性)\\[10pt](fg)’&=f’g+fg’\quad&&(ライプニッツ則)\end{align}

\(\Sigma\)を使ってごりごり計算していきます。

(証明)
\begin{align}f&=\sum_la_lX^l\\[5pt] g &=\sum_mb_mX^m\end{align}とおく。(\(a_l,b_m\in R\))

(線型性)\[af+bg=\sum_n(aa_n+bb_n)X^n\]と表せるので、\begin{align}(af+bg)’&=\sum_nn(aa_n+bb_n)X^{n-1}\\&=\sum_nana_nX^{n-1}+\sum_nbnb_nX^{n-1}\\&=a\sum_nna_nX^{n-1}+b\sum_nnb_nX^{n-1}\\&=af’+bg’\end{align}が成立する。

(ライプニッツ則)\begin{align}(fg)’&=\left(\sum_n\left(\sum_{n=l+m}a_lb_m\right)X^n\right)’\\&=\sum_nn\left(\sum_{n=l+m}a_lb_m\right)X^{n-1}\\&=\sum_{l,m}(l+m)a_lb_mX^{l+m-1}\\&=\sum_{l,m}(la_lb_m+ma_lb_m)X^{l+m-1}\\&=\sum_{l,m}la_lb_mX^{l+m-1}+\sum_{l,m}ma_lb_mX^{l+m-1}\\&=\sum_n\left(\sum_{n=l+m-1}la_lb_m\right)X^n+\sum_n\left(\sum_{n=l+m-1}a_lmb_m\right)X^n\\&=\left(\sum_lla_lX^{l-1}\right)\left(\sum_mb_mX^m\right)+\left(\sum_la_lX^l\right)\left(\sum_mmb_mX^{m-1}\right)\\&=f’g+fg’
\end{align}
(証明終)

コメント

タイトルとURLをコピーしました