有限次拡大と代数拡大の関係

本記事では以下の性質を示します。

体の拡大\(L/K\)について、以下は同値。\begin{align}&(1)L/Kは有限次拡大\\[5pt]&(2) L/Kは有限生成代数拡大\\[5pt]&(3)K上代数的なa_1,\dots,a_n\in LによってL=K(a_1,\dots,a_n)と表せる。\end{align}

補題

まずは証明に用いる補題を用意します。

体の拡大\(L/K\)と\(a\in L\)に対し、以下は同値。
\begin{align}&(1)\quad aはK上代数的\\[5pt]&(2)\quad K[a]=K(a)\end{align}

代数的な元の特徴づけですね。

(補題の証明)
(1)\(\Rightarrow\)(2) 環準同型\(K[X]\to L\)を$$\phi_a:f(X)\mapsto f(a)$$によって定める。この像\(\mathrm{Im}\phi_a\)こそが\(K[a]\)である。また、\(a\)が\(K\)上代数的であることから\(\mathrm{ker}\phi_a\neq (0)\)である。さらに\(K[X]\)はPIDなので、ある元\(f(X)\in K[X]\:(\mathrm{deg}f(X)>0)\)によって\(\mathrm{ker}\phi_a=(f(X))\)と表される。準同型定理より$$K[X]/(f(X))\cong K[a]$$となり、右辺は体\(L\)の部分環なので整域である。従って\(f(X)\)は素元で、特に既約である。よって\((f(X))\)は極大イデアルで、左辺が体となることが分かる。よって\(K[a]\)は体となり\(K(a)\)の最小性から$$K[a]=K(a)$$となる。
(1)\(\Leftarrow\)(2) \(a=0\)のとき主張は自明なので、\(a\neq 0\)とする。\(a^{-1}\in K[a]\)より、ある\(c_i\in K\)が存在し、$$a^{-1}=c_na^n+\dots +a_0$$と表せる。辺々\(a\)をかけて整理することで、$$c_na^{n+1}+\dots+c_0a-1=0$$となり、\(a\)は\(K\)上代数的である。
(証明終)

では本筋の証明に戻りましょう。

証明

\((1)\Rightarrow(2)\) 有限生成は明らかなので、代数的であることを示す。\([L:K]=n\)とおき、\(x\in L\)を任意に取る。このとき\(n+1\)個の元\(\{1,x,x^2,\dots,x^n\}\)は\(K\)上一次従属とならざるを得ない。よって\((a_0,\dots,a_n)\neq(0,\dots,0)\)なる\(a_i\in K\)が存在し$$a_0+a_1x+\dots+a_nx^n=0$$が成立する。これはすなわち\(x\)が\[a_nX^n+\cdots+a_1X+a_0\in K[X]\]の根だということに他ならない。よって\(x\)は\(K\)上代数的。

\((2)\Rightarrow(3)\)有限生成であることから、ある\(a_1,\dots,a_n\in L\)によって\[L=K(a_1,\dots,a_n)\]と表せて、代数拡大であることから各\(a_i\)は\(K\)上代数的である。

\((3)\Rightarrow(1)\) \((3)\)より\(L=K(a_1,\dots,a_n)\qquad(a_i\in L)\)と表せる。\(n\)に関する帰納法で示す。
(\(n=1\))上の補題より\(K(a)=K[a]\)となる。\(a\)の\(K\)上の最小多項式を$$f(X)=X^n+c_{n-1}X^{n-1}+\dots+c_0$$としたとき、{\(1,a,\dots,a^{n-1}\)}が\(K[a]\)の\(K\)上の基底となることを示す。
(\(K[a]\)を張ること)$$A:=K+Ka+\dots+Ka^{n-1}=\mathrm{span}_K\{a^i\}_{i=0,…,n-1}$$とおく。\(A=K[a]\)をいえばよく、そのためには任意の非負整数\(m\)に対し\(a^m\in A\)をいえば十分。\(0\leq m \leq n-1\)の時は明らか。\(m=n\)のときは$$a^n=-c_{n-1}a^{n-1}-\dots -c_0\in A$$より良い。\(m\geq n\)のとき、\(a^m\in A\)と仮定すると、$$a^m=c’_{n-1}a^{n-1}+\dots+c’_0$$と表せて、辺々\(a\)をかけることで\begin{align}a^{m+1}&=c’_{n-1}a^n+\dots+c’_0a\\&=c’_{n-1}(-c_{n-1}a^{n-1}-\dots -c_0)+\dots+c_0a\\&=(-c’_{n-1}c_{n-1}+c’_{n-2})a^{n-1}+\dots-c’_{n-1}c_0\in A\end{align}となり、帰納的に任意の\(m\)に対し\(a^m\in A\)となる。

(一次独立性)\(d_{n-1}a^{n-1}+\dots+d_0=0\) (\(d_i\in K\))とする。このとき\(d_{n-1}=\cdots=d_0=0\)でないと、\(f(X)\)が\(a\)の最小多項式であることに矛盾する。よってこれらは\(K\)上一次独立。

以上より{\(1,a,\dots,a^{n-1}\)}は\(K[a]\)の\(K\)上の基底となり、\(K(a)/K\)が有限次拡大であることが示せた。

一般の\(n\)については\(n-1\)以下の場合を仮定し、\(K’:=K(a_1,\dots,a_{n-1})\)とおく。仮定より\(K’/K\)は有限次拡大である。\(a_n\)は\(K\)上代数的なので、特に\(K’\)上も代数的である。従って上で示したことより、\(K'(a_n)/K’\)は有限次拡大。よって\(K'(a_n)=K(a_1,\dots,a_n)/K\)は有限次拡大となる。

以上より帰納法がまわり、\(K(a_1,\dots,a_n)/K\)が有限次拡大となることが示せた。

(証明終)

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