分離拡大の特徴づけ

本記事では分離拡大の特徴づけについて解説します。条件の同値な言い換えはたくさん知っている方がよいので、しっかりと理解しておきましょう!

主張

主張は以下の通りです。

有限次拡大\(L/K\)に対し、以下は同値。\begin{align}&(1)L/Kは分離拡大\\[10pt]&(2)K上分離的な元a_1,\dots,a_n\in LによってL=K(a_1,\dots,a_n)と表せる。\\[10pt]&(3)[L:K]=[L:K]_s\end{align}

ここで\([L:K]\)は拡大次数、\([L:K]_s:=|\text{Hom}_K(L,\overline K)|\)は分離次数です。

体論でよくやるように単拡大の場合に帰着して証明するので、次のような補題を用意しておきます。

補題

\(L/K\)を代数拡大とする。\(a\in L\)の\(K\)上の最小多項式を\(f(X)\in K[X]\)とすると、以下が成立する。\[(f(X)の相異なる根の個数)=[K(a):K]_s\]

(証明)\(\;\mathscr{F}:=\{a_i\in \overline K | f(a_i)=0,a_1=a\}\)を\(f(X)\)の根全体(\(a\)の共役元)の集合とする。まず\(\mathscr{F}\)から\(\text{Hom}_K(K(a),\overline K)\)への写像を構成する。各\(a_i\)は\(K\)上代数的なので、代入による準同型写像\[K[X]\to K(a_i)\;;\;F(X)\mapsto F(a_i)\]は\(K\)上の体の同型\[\phi_i:K[X]/(f(X))\stackrel{\cong}{\longrightarrow} K(a_i)\]を誘導する。ここで合成\[\Phi_i:=\phi_i\circ \phi_1^{-1}:K(a)\stackrel{\cong}{\longrightarrow}K(a_i)\hookrightarrow \overline K\]を考えると、\(\Phi_i\in \text{Hom}_K(K(a),\overline K)\)となる。また、\[\Phi_i(a)=a_i\]が成立するので、\[a_i\neq a_j\Rightarrow \Phi_i\neq\Phi_j\]となる。よって写像\(\mathscr{F}\to\text{Hom}_K(K(a),\overline K)\;;a_i\mapsto \Phi_i\)は単射となる

逆に\(\psi\in \text{Hom}_K(K(a),\overline K)\)とし\(\psi\)が誘導する写像を、\[\overline\psi:K(a)[X]\to \overline K[X]\]とすると、\(\psi\)が\(K\)上の準同型であることから\(\overline\psi(f(X))=f(X)\)が成立する。よって\[f(\psi(a))=\overline\psi(f)(a)=f(a)=0\]となり、\[\psi(a)\in \mathscr{F}\]が分かる。ここで\(\text{Hom}_K(K(a),\overline K)\)の元は\(a\)の行先によって一意的に決定されるので、\(\psi,\psi’\in\text{Hom}_K(K(a),\overline K)\)に対し、\[\psi(a)=\psi'(a)\Rightarrow\psi=\psi’\]が成立する。よって写像\(\text{Hom}_K(K(a),\overline K)\to\mathscr{F}\;;\psi\mapsto\psi(a)\)は単射となる

以上のことより\[|\mathscr{F}|=|\text{Hom}_K(K(a),\overline K)|\]が成立し、これはすなわち\[(f(X)の相異なる根の個数)=[K(a):K]_s\]ということである。
(証明終)

この補題から、次のようなことが分かります。

\(\diamondsuit\)\(L/K\)を代数拡大、\(f(X)\)を\(a\)の\(K\)上の最小多項式とすると、
\begin{align} a はK上分離的&\Leftrightarrow f(X)は重根を持たない\\&\Leftrightarrow(f(X)の相異なる根の個数)=\deg f(X)\\&\Leftrightarrow[K(a):K]_s=[K(a):K]\end{align}となる。

ではこれをふまえて本筋の証明に戻りましょう。

証明

(1)\(\Rightarrow\)(2)\(\;L/K\)は有限次拡大なのである\(a_1,\dots,a_n\in L\)により\[L=K(a_1,\dots,a_n)\]と表せる。\(L/K\)が分離拡大であることより\(a_i\)は\(K\)上分離的である。

(2)\(\Rightarrow\)(3)\(K_i=K(a_1,\dots,a_i),K_0=K\)とおく。このとき拡大次数分離次数の性質から\begin{align}[L:K]&=[K_n:K_{n-1}]\cdots[K_1:K] \\ [L:K]_s&=[K_n:K_{n-1}]_s\cdots[K_1:K]_s\end{align}が成立する。いま各\(a_i\)は\(K\)上分離的なので、特に\(K_{i-1}\)上も分離的である。よって上の\(\diamondsuit\)により、\[[K_{i-1}(a_i):K_{i-1}]=[K_{i-1}(a_i):K_{i-1}]_s\quad(i=1,\dots,n)\]が成立する。いま\(K_i=K_{i-1}(a_i)\)なので\[[K_i:K_{i-1}]=[K_i=K_{i-1}]_s\]となる。以上より\[[L:K]=[L:K]_s\]が成立する。

(3)\(\Leftarrow\)(1)\(x\in L\)とすると、\begin{align}[L:K]_s&=[L:K(x)]_s[K(x):K]_s\\&=|\text{Hom}_{K(x)}(L,\overline K)||\text{Hom}_K(K(x),\overline K)|\\&\leq[L:K(x)][K(x):K]\\&=[L:K]\\&=[L:K]_s\end{align}より、途中の不等号で等号が成立する。特に\[[K(x):K]_s=[K(x):K]\]が成立し、上の\(\diamondsuit\)より\(x\)は\(K\)上分離的である。従って\(L/K\)は分離拡大である。
(証明終)

定義通り分離性を示すのはちょっと難しい場合があるので、このような特徴付けを知って使えるようになっておくと便利です。

コメント

タイトルとURLをコピーしました