体の準同型の個数と拡大次数の関係

本記事では体の準同型の個数と拡大次数の関係について解説します。

主張

主張は以下の通りです。

\(L/K\)を有限次拡大、\(M/K\)を体の拡大とする。このとき以下の不等式が成立する。\[|\text{Hom}_K(L,M)|\leq[L:K]\]

非常にシンプルですね。とても基本的な不等式なのでよく使われます。

証明

\(n=[L:K]\)とおき、\(a_1,\dots,a_n\in L\)を\(L\)の\(K\)上の基底とする。ここで相異なる\(n+1\)個の元\(f_1,\dots,f_{n+1}\in \text{Hom}_K(L,M)\)が存在すると仮定し、\(n\times (n+1)\)行列\(A\in M_{n,n+1}(M)\)を\[A:=\left(f_j(a_i)\right)_{i,j}\]で定める。\(A\)が定める線形写像\[f_A:M^{n+1}\to M^n\]を考える。定義域の次元の方が大きいので、\(f_A\)は単射にはならない。従って\((b_1,\dots,b_{n+1})\neq(0,\dots,0)\)なる元\[b= {}^t\!(b_1,\dots,b_{n+1})\in \text{ker}f_A\]が取れる。\(x\in L\)を任意に取る。\(a_i\)は\(L\)の基底なので、\[x=c_1a_1+\cdots+c_na_n\quad(c_i\in K)\]と表せる。このとき、\begin{align}\sum_{j=1}^{n+1}b_jf_j(x)&=\sum_{j=1}^{n+1}b_jf_j\left(\sum_{i=1}^nc_ia_i\right)\\&=\sum_{j=1}^{n+1}\sum_{i=1}^nb_jc_if_j(a_i)\\&=\sum_{i=1}^nc_i\left(\sum_{j=1}^{n+1}f_j(a_i)b_j\right)\\&=0\end{align}となる。最後の等号はかっこの中身が\(f_A(b)=Ab\)の第\(i\)成分であることと\(b\in \text{ker}f_A\)から。いま\(x\in L\)は任意だったので、これはすなわち\[b_1f_1+\cdots+b_{n+1}f_{n+1}=0\]ということだが、デデキントの補題から\(f_1,\dots,f_{n+1}\)は\(M\)上一次独立なので\[b_1=\cdots=b_{n+1}=0\]が従う。これは\((b_1,\dots,b_{n+1})\neq(0,\dots,0)\)に矛盾。
(証明終)

ガロア理論へ

この不等式はガロア理論において極めて重要な、アルティンの定理の証明にも以下の形で用いられます。

特に\(L=M\)の場合を考えると、\(\text{Hom}_K(L,M)\supset\text{Aut}(L/K)\)なので\[|\text{Aut}(L/K)|\leq[L:K]\]となる。

アルティンの定理について、詳しくは以下の記事をご覧ください。

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