本記事ではデデキントの補題(独立性定理)について解説します。ガロア理論で重要な役割を果たす補題なので、きちんと把握しておきましょう!
準備
まず必要な記号などの準備をします。
体の拡大\(L/K,M/K\)に対し、\(K\)上の線型写像\(L\to M\)全体の集合を\(\text{Lin}_K(L,M)\)で表す。このとき、\(f,g\in \text{Lin}_K(L,M),a\in M\)に対し、\begin{align}(f+g)(x)&:=f(x)+g(x)\\(a\cdot f)(x)&:=a\cdot f(x)\end{align}で\(f+g,a\cdot f\in \text{Lin}_K(L,M)\)を定めることで、\(\text{Lin}_K(L,M)\)は\(M\)-ベクトル空間となる。
\(K\)上の体準同型は当然\(K\)上の線型写像にもなっているので、\[\text{Hom}_K(L,M)\subset \text{Lin}_K(L,M)\]が成立します。デデキントの補題はこれらの元についての主張です。
主張
主張は以下の通りです。
\(L/K,M/K\)を体の拡大とする。\(f_1,\dots,f_n\in \text{Hom}_K(L,M)\)を相異なる\(n\)個の元とする。このとき\(f_1,\dots,f_n\)は(\(\:\text{Lin}_K(L,M)\)の元として)\(M\)上一次独立。
(証明)\(n\)に関する帰納法で示す。\(n=1\)のときは自明。\(n-1\)以下の場合を仮定する。$$a_1f_1+\cdots+a_nf_n=0\quad(a_i\in M)\qquad\cdots(*)$$とする。\(f_1\neq f_2\)より、ある\(x\in L\)が存在し\(f_1(x)\neq f_2(x)\)となる。このような\(x\)を一つとり固定する。\(y\in L\)を任意に取り、\((*)\)に\(xy\)を代入すると、\[\sum_{i=1}^na_if_i(xy)=\sum_{i=1}^na_if_i(x)f_i(y)=0\qquad\cdots(**)\]となる。一方、\((*)\)に\(y\)を代入し、\(f_1(x)\)をかけることで、\[\sum_{i=1}^na_if_1(x)f_i(y)=0\qquad\cdots(***)\]を得る。ここで\((**)\)から\((***)\)を辺々引くことで、\[\sum_{i=2}^na_i(f_i(x)-f_1(x))f_i(y)=0\]となる。いま\(y\)は任意だったので、これは\[\sum_{i=2}^na_i(f_i(x)-f_1(x))f_i=0\]ということ。よって帰納法の仮定から\[a_i(f_i(x)-f_1(x))=0\quad(i=2,\dots,n)\]が従う。特に\[a_2(f_2(x)-f_1(x))=0\]となるが、いま\(f_1(x)\neq f_2(x)\)なので\(a_2=0\)となる。従って\((*)\)から、\[a_1f_1+a_3f_3+\cdots+a_nf_n=0\]となり、帰納法の仮定から\[a_1=a_3=\cdots=a_n=0\]が従う。
(証明終)
この補題から体の準同型の個数と拡大次数の関係やアルティンの定理といった、ガロア理論の根幹をなす命題が導かれます。具体的には以下の記事をご覧ください。
実はこの補題はもっと一般的な設定で成り立ちます。今回はガロア理論への応用を見据えていることから、体の準同型に限って解説しました。
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